ここでは日記のほかに小説の進捗状況などを書いていきます
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海岸の町シリーズ(第4話)
category: 小説(海岸の町シリーズ) | author: 相葉ユウ
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    翌日、今日も朝から天気は良好で私の部屋に廊下から朝日が差し込んできた。
    私は昨日と同じように起きると、近くにある上着を着て部屋を出た。
    今日は少し霧が出ていて白い煙が漂っているように見える。さらにそこに太陽の光が当たり幻想的に見えた。
    別館を出ると別館と本館の間にある庭に出た。
    別館と本館は一応屋根のある通路でつながっていて、その通路の両脇はきれいな花が植えられた庭があった
    庭にでると花壇にある猫じゃらしと遊んでいるネコを見つけた。ネコに近づくと逃げると思ったが、逆に私に擦り寄ってきた。
    ちなみにこのネコはお母さんが可愛がっているネコで庭の中にはまだ数匹いるだろうが、今私が見る限りこの1匹しかない
    私はそのネコを抱っこすると、この子に言った

    「一緒に朝ごはんを食べにいこうっか」

    するとこのネコは私の言葉が分かったのか、にゃーと鳴き声で返事を返してきた。
    私は他のお客さんに迷惑がないように本館を通らないで事務室の裏口に行くと、
    その部屋にある棚の置いてあるキャットフードを一つとって缶きりでそれを開けた。
    小皿にそれを盛り付けてネコの前に出してあげた。ネコは嬉しそうにそれを食べていた。
    私はそれを事務所にあるイスに座りながらのんびりと見て、過ごしていた。

    「こういう朝も、いいね」

    ちょっとした朝の出来事。それは私にとって綺麗なものだった。

     

    「カオリ、今日の朝食をもってきたよ」

    私がネコばかり見ていたのでここに誰は入ってきた事に全然気づかなかった。
    驚いて声のするほうに振り返ると、お母さんがお盆にここの朝食の定番メニューであるご飯に味噌汁に卵焼きがあった。
    どうしてお母さんに、私がここにいるのが分かったのと聞くとここに入るのを見かけたからよと言われた。
    お母さんはそれを机の上に置くと、私の額を触って熱はないわねと真剣な表情で言った
    私はあまりのお母さんの心配ように少し苦笑いをしながら大丈夫だよと返した。
    一方、一人食事をしているネコさんにつられたのか他のネコさんもここに集まってきた。
    私はネコさんたちがえさの取り合いをしないように自分のご飯を食べる前に他のネコさんの分の朝食を用意するとお母さんが

    「まるでお母さんね」

    そう温かく微笑みながら言った。ネコたちは仲良くえさを食べていた。
    彼らはみんな仲良し。けんかをして、時には仲が悪くなる事もあるが、最後はみんな仲直り。
    それは小さな子供達と同じ。最後は結局仲直り。私にも彼らとそうありたいがもはや叶わぬこと
    すでに人ではない私にそんな事はもはや叶わないし、すでに彼らとは年齢が違う。
    お母さんとお父さんとこの場所が平和であり続けるならば今の私にとって他の事はどうでも良い。今この場所だけ

    「ねぇ、お母さん」

    「なに」

    「もし私がこの世界の敵になったら、お母さんはどうする」

    私がそんな突拍子もない質問をするとお母さんは驚きの表情を浮かべるが、質問に答える前に私を後ろから抱きしめた
    お母さんは何も答えなかったが今の態度でどんな答えだったのか分かった。
    きっと、私がどんなに世界の敵になっても、私のことを娘だと思ってくれるという答えを

    「それじゃ、私はこれで仕事に戻るけど、カオリ、ちゃんと体調管理しないとだめよ」

    お母さんの出て行く前の何気ない一言でも今の自分には最高の言葉に感じる
    私はネコさんたちが食べた後の食器を事務所に設置されている簡易キッチンで洗って食器乾燥器に入れた。
    今度は自分の食べた後の食器を持って事務所の裏口から出ると、厨房の裏口の置けて食器をおじさんに返した。
    今日もいつものようにおいしかったよと言うとおじさんはまたぶっきら棒にそうかと返事をした。
    さらに体調には気をつけろと私に言葉をかけてくれた。私はお辞儀をして裏口から出て行った。

     

    私は砂浜には行かないで一日旅館で過ごそうと思った。
    たまにはそういう日もいいだろうと言う思いもあったが、彼らに会いたくなかったという理由もあった。

     

    部屋に帰っても特にすることがない自分は久々に部屋の荷物整理でもしようと思い立ち、部屋に出ている小物を整理しだした
    ちなみに、私の部屋は部屋がふたつあって、旅館の部屋なので(一応)玄関から直線状に部屋は作られている
    玄関から入ってすぐの部屋は少し小さいが奥の部屋はその部屋より広い部屋になっている。
    さらにいえば、奥の部屋にあるベランダのような場所からは海が一望できる。
    もちろん、ベランダは西向きにあるので、太陽日没時はきれいな光景が見れる。
    お客さんはたいてい本館だけなのでこの別館の良さは知らない。別館の2階と1階の私の部屋は職員専用の部屋となっている。
    今日は元気いっぱいの高校生が別館の大広間などにいるのでいつもよりうるさい。
    私はうるさい彼らに悪態をつきながら部屋の片づけを続けると、本の束一冊のアルバムを見つけた。
    これは私がここに来たときに貰ったものでここでの思い出の写真や
    写真家の男性があの展望台や砂浜で撮り、私にくれた写真が収められている。
    私はその写真の一枚一枚をゆっくりと見ていた。私が笑っているときに撮られた写真はあまりない。
    基本的に呼ばれて振り返ったときに撮られた写真が多い
    別に笑えないとかそういうことではないが、なぜか笑う気がないのだ。
    だから、ここに勤めているみんなで写真をとったものも私は表情は硬い。


    あるページで多くの人が集団で写っている写真があった。これを撮ったころはまだ私がここに来て間もない頃だった。
    お母さんが記念撮影をしましょうと言い出したのが発端だ。
    最初はお父さんは嫌がったがお母さんの勢いに負けてしぶしぶ写真に写っている。
    私は写真のちょうど真ん中に写っていて、後ろから私と仲が良い仲居さんが抱き着いている
    お母さんとお父さんは私の両脇に居て、あとはばらばらだが、それぞれピースをしていたり自分なりに写っている
    その写真以来、この旅館を利用した人に、旅館のどこかで記念撮影をしてもらうというサービスが誕生した。
    もちろん、このサービスを考えたのがお母さんであったのことは言うまでもない
    部屋の片づけを中断してそのアルバムに魅入られたように見た。
    しばらくアルバムをめくっていると、夕日に包まれて私が砂浜に座っている時の写真があった。
    これはあの写真家の男性が私にはじめてあったときに撮ったものだ。
    彼曰く、ここには世界の美しさが写っているという事だが、私は別にそんな事は思わなかった。
    その隣の写真には、仲の良い仲居さんである林ユリさんと私、それと猫の親子が写っている
    これはお母さんが飼っているというか旅館に住んでいる猫が子供を出産したのを記念してお母さんが撮った写真、
    ちなみにお母さんと私と猫の親子が写っている写真もある。一つ一つに思い出がたくさん詰まったアルバム
    それをきれいに本棚に片付けると室内に設置されている小さな冷蔵庫にあるコーヒーをとり、海を見ながら飲んだ。

     

    そのコーヒーはいつもは少し苦いと思うコーヒーの味が今日はさらに苦いように感じられた。


    ----------------------------------------------------------------------

    ここにはじめて来たときは、私はおびえた子ウサギのように仲居さんともあまり話さず無口な女の子だった。
    ただ、一人の仲居さんが私に積極的に話してきた。彼女の名前は林ユリ。私がもっとも仲の良い仲居さんだ。
    最初は無視していたがそれでも話しかけてきた。私は一度どうしてそんなに私に話しかけるのと聞いた。
    すると、彼女は私はあなたと友達になりたいだけと。
    どうしてそうなりたいのかと聞くと彼女は分からないけどただ友達になりたいだけだと返すだけだった。

    少しずつ、彼女と話すようになり私は心を開いていった。信用しても大丈夫だと思ったから。
    ここの人たちは優しかった。自分があれだけ無視し続けたのに私が話しかけるときちんと言葉を返してくれる。
    それに元気になったねとおまけ付で。今では、楽しく会話ができるまでになり、暇なときにはよくおしゃべりをしている。
    そんな過去のことを思い出しながら歩くと、すぐにロビーに着いたように感じた。
    ロビーには誰も居らず皆彼らの相手に忙しいのであろう。

    私は一人食堂に向かおうとしたとき、ロビーのソファーでゆっくりと眠っている少女を見つけた。
    彼女はもう少しで食事の時間が終わるである事を知らないのであろうし、友達も呼びに来る気配はない。
    私はため息をつくと、女の子に近づいた。いくら、この季節が夏だとしてもこのロビーには冷房がかかっている。
    こんなところで寝ていれば風邪を引くのは目に見えている。
    幸せそうに眠っている彼女を起こすのは起こすのも少々気が引けたが、肩を軽く揺さぶっておこした。
    彼女はまだ眠いのか少し眠たそうな目でで私を見た。

    どうやら、まだ自分がどうなっているのか理解していないようだったので私は彼女に晩御飯を食べそこねたようだねと言った。
    するとようやく、今自分のいる状況と今の時間を大体予想しショックを受けたような顔をした。
    どうやら、今日は彼女にとって嬉しい晩御飯だったみたいだ。
    私は食堂で少し食べる?と聞くと彼女は頷き、彼女と食堂に向かった。

     


    食堂にはいつものおじさんがようやく一段落したのかイスに座り新聞を読んでいた。
    他の厨房の人も同じく自分達のご飯を食べている人もいればゆっくりとテレビを見ている人もいた
    私が食堂に顔を出したのに気づくとおじさんは今日は上の連中とメニューは一緒だぞと言い、カウンターを指差した。
    そこにはすでに料理が出されていた。私はその料理の量を見てある意味ショックを受けた。
    いつもの1.5倍はある。これを全部食べさせるつもりだったのかと思うと今この少女がいたことにものすごく感謝をしている。
    あんな量、小食の私が食べれる量じゃないことは彼だって十分わかってはずだ。
    どうせ、多く作りすぎたからとりあえずまとめて入れたといったところであろうか。

    とりあえず、私は女の子と席に着くとおじさんがそいつはどうしたんだと聞いてきた。
    まあ、今頃上でわいわいしているはずの生徒が私と一緒にいたらここに勤めている人から見たら驚くべきことなのであろう。
    他人に興味を示さないという事で通っている私が何にも知らない女の子と一緒にいるのだから。
    私は、居眠りしてて食べ損ねただけよと事実をそのまま言うと女の子は顔を真っ赤に染めた
    恥ずかしいのは当たり前だが、事実を言ったほうが早い。おじさんはそいつはまた珍しいなと言い新聞を再び読み始めた。
    私は女の子と一緒に豪華な夕飯を食べ始めた。もちろん、このあたりのことについて聞いてくる女の子の質問を聞きながら。
    いつもとは違う楽しい会話をしながらの夕飯になった

    食べている途中で空の上にはきれいな月が丸く出ていた。私はそれをみて、普通の人では絶対に言わない呼び方をするときがある

    『赤い月』

    私がいた頃は月は赤かった。月のすべてが赤かったということはなかったが、赤い色のある月。だから『赤い月』
    月の光がこの食堂にも入ってきていて、穏やかな海には月が映っている。
    それは美しく神秘的な光景だろう。人を魅了する月。ルナティック
    月が人を狂わす、西洋では月が人間を狂気に引き込むと言われた。そう言われている月も穏やかなものだ。

     

    そんな事をぼんやりと思いながら食事を済ませると、彼女を旅館の部屋まで送ることにした。
    もう彼女がいなくなったことには気づいているだろうし、事情を説明したほうがいいだろう。

    「送っていくよ。みんな、心配しているだろうし」

    私がそう言うと彼女は恥ずかしそうにありがとうございますと言った。
    彼女と共に本館の廊下を歩いているとおそらく先生であろう女性が彼女の姿を見て駆け寄ってきた。
    どこに行ってたの、みんな心配してるわよと少し叱るように話した。
    私は女性に、1人でロビーで寝ていて晩御飯を食べ損ねたので私と一緒に食べていたんですと事情を話した。
    彼女はそうなんですかと納得してくれた。女性にあとをお願いしますというとその場を離れようとしたとき女の子が言った

    「あの、あなたのお名前は」

    そういえば、言っていなかった事に気づき言った

    「水川、水川カオリ、ちなみに18歳だから」

    自分のことを名乗ると本館を後にようと別館への連絡通路の方向に歩き出した。
    いつもと違って少しうるさい通路、高校生達が騒いでいたのだろう。先生が説教をしている声が聞こえた。
    こんなに平和な世界もあのときには想像もつかなかった。
    そして、連絡通路にもう少しというところで後ろから声をかけられた。

    「水川さん、すこしお話をしませんか?」

    この言葉、いや、この声の主は私が大嫌い人のものだ。私はすぐに分かった。
    無視をしても良いがここで下手に疑われたくはない。了承の言葉を出すと本館と別館の間にある庭のほうに歩き出した。
    別にどこでも良いが誰もいないとはっきりと分かる場所で話したかった。
    どうせ、彼が聞きたいことは大体想像できた。なぜ、自分がこんな容姿をしているのか、もしかしたら・・・
    私たちがその場所に着くと彼は話を切り出し始めた

    「あなたは、どうしてそんな容姿をしているんですか?」

    「そんな事を知らないわ。私がこんな容姿になったかなんて、海で救出されたときにはもうこんな容姿だったそうよ」

    別にそう答えれば誰もが疑う事はなかったが、これがいろいろと知っている彼ならば話は別だ。
    彼は知っているのだから、この容姿の本当の意味を

    「そうですか」

    「それだけなら、私はもう戻るから」

    そう言うと私はその場から立ち去ろうとしたが彼は私に言った。碇シンジという名に何か心当たりはありませんかと。
    私は振り返り、そんなに名前に聞き覚えはないわと答え私はその場を後にした

     

    自分はもう『知らないのだ』
    彼がいたことも、かつて使徒が存在していた事も。
    自分はもうあの街の人間ではないのだから

     

     

    JUGEMテーマ:連載

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